乳酸菌が虫歯菌や歯周病を抑えるって本当?歯に関わる乳酸菌習慣について解説
乳酸菌が虫歯菌や歯周病を抑えるって本当?歯に関わる乳酸菌習慣について解説
近年、乳酸菌を利用した口腔ケアが注目を集めています。
「酸を作る菌が、なぜ歯の健康に良いと言われているの?」と疑問に思う人もいるかもしれません。しかし、乳酸菌を含む善玉菌と口腔内の菌バランスに関する研究は各方面で進められており、虫歯菌や歯周病菌への影響についても注目されています。
この記事では、乳酸菌とはどういうものなのか、口腔内環境が虫歯や歯周病にどのように影響するのか、乳酸菌と虫歯菌や歯周病菌の関係や、乳酸菌がお口の健康にどのように関わるのか、日常生活で実践できるケア方法について解説します。
乳酸菌とは何か?口腔内での基本的な働き

乳酸菌の口腔内での働きとともに、まずは、私たちの口の中に生息する数百種類もの細菌の種類、主な働きについて知っておきましょう。口腔内には多くの種類の細菌が存在し、それぞれが異なる働きを持っています。
善玉菌と悪玉菌のバランスと働きの違い
口腔内の細菌は、主にその働きによって、善玉菌と悪玉菌、日和見菌に分けられます。健康な口腔環境を維持するためには、これらの適切なバランスが不可欠です。
【健康時の口腔内での菌の割合】
・善玉菌:約20~30%
・悪玉菌:約10%前後
・日和見菌:約60~70%
このように、健康な口腔内では細菌の種類と数が適切にコントロールされているのが通常です。
これらの菌はそれぞれ全く異なる役割を果たしています。
善玉菌は口腔内のpHを中性に保ち、有害な細菌を増えにくくする働きを持っているとされています。また、他の菌の活動に影響を与える物質を作り出し、悪玉菌の活動を弱めるとも言われています。
一方、悪玉菌は口腔内の環境をマイナスに傾ける働きをする菌です。糖分を分解して酸を作り出して歯のエナメル質を溶かしたり、歯茎や骨を壊す毒素を放出したり、口臭の原因物質をつくる、炎症を長引かせるなど、お口の健康を脅かす恐れがあります。
日和見菌は普段は大きな害もなくおとなしくしていますが、口腔環境や体調の変化によって善玉菌側にも悪玉菌側にも傾く菌です。健康時は善玉菌と共存し、悪い働きはほとんどしません。しかし、口腔環境が悪化すると、悪玉菌に加担して有害な作用をすることがあります。
口腔内環境の悪化と健康への影響
健康な口腔内では、善玉菌が悪玉菌の活動を抑え、日和見菌もおとなしくしています。しかし、口腔環境が悪い方へ変化すると、悪玉菌が優勢になりやすくなります。
【口腔内環境が悪化しやすくなる習慣の例】
・糖分を多く含む飲食物を頻繁に摂取する
・間食やだらだら食べが多い
・歯磨き不足、磨き残しが多い
・加齢やストレス、口呼吸などによる唾液量の現象
・喫煙やアルコールの過剰摂取
・定期的な歯科検診やクリーニングを受けていない
こうした状態が続くと、以下のような影響が現れやすくなると言われています。
・虫歯の原因となる酸の産生増加
・歯茎の炎症や出血
・口臭の発生
・歯周病の進行
口腔内環境が悪化しやすくなる習慣は、口腔内の細菌バランスの崩れ、すなわち悪玉菌の増加と日和見菌の悪玉化に繋がります。これは、口腔トラブルを引き起こす大きな要因になると考えられているのです。
乳酸菌は口の中の環境に影響を与える?
乳酸菌は、口腔内に住む菌の中でも「善玉菌」のグループに分類され、口の中の環境に様々な形で関わると言われています。
例えば、乳酸菌はその名の通り「乳酸」を作るといった特徴があります。この乳酸は、糖を分解する過程で生じる有機酸の一種で、口腔内のpHを変化させる要因のひとつです。過度な酸性環境は悪玉菌などの特定の細菌が増えにくくなる条件だと言われており、乳酸によって口腔内が酸性に傾くことが、口腔内の細菌バランスの調整に役立つとされているのです。
また、乳酸菌はバクテリオシンという物質を産生するとも言われています。この物質は、虫歯菌や歯周病菌などの他の菌の活動を抑える働きがあるといった研究もあります。
さらに、乳酸菌は悪玉菌との競争において優位に立つことがあると言われています。限られた栄養や付着できる場所をめぐって他の菌と競い合うことで、悪玉菌などの活動に影響を与えるのです。
これらの複数のメカニズムによって、乳酸菌は口腔内の細菌バランスを整え、口腔内の健康状態をサポートする役割を果たすことが期待されています。
虫歯と歯周病の発生メカニズム

虫歯と歯周病は口腔内の細菌活動によって引き起こされる病気です。各々の病気には、異なる種類の細菌が関与し、発症過程も異なります。
口腔内に存在する数百種類の細菌の中でも特に問題となる虫歯菌と歯周病菌は、どのような働きで私たちの口腔環境に影響を及ぼしているのでしょうか。
虫歯菌の働きと酸の生成過程
虫歯の原因となる主要な細菌は、ストレプトコッカス・ミュータンス菌と言われる悪玉菌です。この虫歯菌は、私たちが摂取する砂糖や炭水化物を餌として活動します。この虫歯菌は、以下のようなステップで酸を生成し、虫歯を引き起こします。
1.糖分を代謝する過程で乳酸などの有機酸を大量に産生
2.酸が歯の表面に付着して口腔内のpH値が急激に下げる
3.口の中が酸性に傾く
4.歯のエナメル質が徐々に溶けてダメージを受ける
5.歯の内部や象牙質の神経にまでダメージが広がると痛みや穴ができる
このように、虫歯菌の活動が活発になると、酸が生成されて歯が溶かされてしまうのです。
歯周病菌と炎症の関係
歯周病菌の代表格は、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌と呼ばれる悪玉菌です。この菌は、歯と歯茎の境目で増殖するといった特徴があります。虫歯菌とは異なり、直接歯を溶かすのではなく、歯茎に炎症を引き起こす細菌です。
歯周病菌は強力な毒素を放出し、歯茎の組織に炎症を引き起こす要因のひとつです。初期段階では歯茎の腫れや出血が見られ、進行すると歯を支える骨を溶かし、歯周ポケットを作り出してしまいます。
炎症が慢性化すると、歯茎が後退し、最終的には歯が抜け落ちる原因となります。
口腔内細菌環境の悪化は虫歯や歯周病菌の大敵
虫歯菌や歯周病菌といった悪玉菌の増殖を促進する要因は複数あります。中でも、最も重要な原因は、不適切な口腔ケアです。
歯磨きが不十分だと、食べかすや細菌が口の中に残り続けます。甘い食べ物や飲み物などの砂糖を多く含む飲食物を頻繁に摂取することは、虫歯菌に栄養を与え続けることになります。また、ストレスや喫煙、唾液分泌の減少など、様々な要因が重なることで、善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れ、病気が発生しやすい状態になるのです。
乳酸菌は虫歯菌や歯周病を抑える?

乳酸菌は、ヨーグルトや発酵食品などに含まれる善玉菌として知られていますが、近年は口腔内の環境をサポートする存在として注目されています。
虫歯や歯周病には特定の菌が関与することが知られていますが、これらと乳酸菌の関係については、国内外で多くの研究が行われてきました。これらの研究は、乳酸菌が口腔内の細菌バランスやpHにどのように影響するかを探るものであり、日常的な口腔ケアへの応用が期待されています。
虫歯菌との関わり
虫歯の原因菌として良く知られるミュータンス菌は、糖を分解して酸をつくり、歯の表面を溶かす性質があります。一部の研究では、特定の乳酸菌株がこのミュータンス菌の増殖や活動に影響を与える可能性が示されています。また、乳酸菌が作る抗菌性の物質や酸が、ミュータンス菌の生活環境や栄養の利用に干渉することが観察されたケースもあります。
これらは乳酸菌を摂取することで口腔内の菌バランスが変化する可能性を示しており、日常のオーラルケアと組み合わせる研究も進められています。
歯周病菌との関わり
歯周病は、歯茎や歯を支える骨を徐々に破壊する疾患で、代表的な原因菌のひとつがポルフィロモナス・ジンジバリス菌です。この菌は酸素の少ない環境を好み、歯周ポケットの奥で活動します。
一部の研究では、乳酸菌が歯周病菌の栄養源となる物質を奪うように働いたり、乳酸菌由来の成分が菌の活動性に影響を与える可能性が報告されています。
さらに、乳酸菌が産生する物質によって口腔内の環境が変化し、結果的に歯茎の健康維持をサポートする作用が期待されるとする見解もあります。
口腔内pHバランスのサポート
虫歯菌が活発に活動すると、口腔内は酸性に傾き、歯の表面のミネラルが溶け出しやすくなります。一部の乳酸菌は口腔内の酸性状態に影響を与え、中性に近い環境の維持をサポートすると報告されています。このような環境変化は、歯にミネラルが再び戻る過程を助けると考えられています。
乳酸菌によるpHバランスの変化には個人差がありますが、日常的な摂取によって徐々に口腔内の環境が整っていく可能性があるとされています。
これらの研究結果は菌の種類や摂取量、個人の生活習慣などによって大きく異なるため、乳酸菌の摂取がすべての人に同じ影響をもたらすわけではありません。あくまで日常の歯磨きやフロスなどの基本的なケアと合わせて取り入れることで、口腔環境の維持をサポートするひとつの方法として活用が検討されているのです。
歯科領域で注目されている乳酸菌の種類と特徴
口腔内の健康維持に関しては、特定の乳酸菌が持つ性質や働きにおいても研究が進められています。特に歯科分野では、虫歯や歯周病に関する研究が活発に行われ、オーラルケア製品への応用が試みられています。
L8020乳酸菌
L8020乳酸菌は、広島大学の研究チームが、虫歯や歯周病のない健康な人の口腔内から発見した特別な乳酸菌株として注目されています。
L8020乳酸菌は、特定の悪玉菌にのみ作用し、他の菌への影響は比較的少ないと言われています。このような性質から、口腔内の細菌バランスを崩さずに、環境維持をサポートする可能性が注目されています。
ロイテリ菌
ロイテリ菌は、口腔内や消化管での活動が研究されている乳酸菌のひとつで、抗菌性の成分の産生や免疫系への働きかける可能性が注目されています。ロイテリ菌を摂取した場合、歯茎の状態や口腔内への菌の構成に変化が見られることがあると言われています。
ヒト由来の乳酸菌
ヒト由来の乳酸菌は、人間の口腔や腸にもともと存在していた菌をもとにしており、安全性や環境への適応性が高いと考えられています。口腔内での生存率や定着率が高いと言われており、長期的な利用に適している可能性が示されています。
LS1乳酸菌やWB21乳酸菌
LS1乳酸菌やWB21乳酸菌などは、それぞれ異なる経路で口腔内の環境に影響を与える可能性があると言われています。そのため、複合的に利用することで、さらなる口腔内ケアのサポートが期待されています。
EF-2001株
EF-2001株は、免疫細胞(特に白血球やNK細胞)を活性化させる「BRM(Biological Response Modifier)」という成分を豊富に含んでいます。この作用により、歯周病の原因となる細菌に対する免疫応答が強化され、炎症の抑制や歯肉の健康維持に寄与すると考えられています。
また、EF-2001は死菌(加熱処理済み)でありながら、腸内や口腔内の善玉菌のエサとなり、悪玉菌の増殖を抑えるバイオジェニックス効果が期待されています 。これにより、口臭や虫歯の原因菌のバランス改善にもつながると期待されています。
乳酸菌を取り入れる際のポイント
乳酸菌を口腔ケアに活用する際は、生活に無理なく取り入れられる方法を選び、継続的に行うことが大切です。日常のケア習慣の中で自然に取り入れることで、口腔内の菌バランスに影響を与える可能性があります。
乳酸菌配合タブレットやペーストの活用方法
乳酸菌配合タブレットやペーストは、市販品の中でも取り入れやすいもののひとつです。多くは口腔内でゆっくり解ける設計になっており、噛まずに舌の上で自然に溶かすことで、乳酸菌が比較的長く口の中にとどまると言われています。
歯磨き後、寝る直前にペーストをお口に含ませて飲める!
ヨーグルトや発酵食品からの日常的な摂取
乳酸菌はヨーグルトや漬物、納豆などの発酵食品にも含まれています。食後や間食時に取り入れることで、自然な形で摂取を続けやすくなるでしょう。
甘みのある食品を摂取した後は、軽く口をすすぐことで、糖分の残留を減らすことも心がけましょう。
歯磨き後の摂取タイミング
歯磨きの直後は口腔内が清潔で、乳酸菌を摂取しやすい状態だと考えられています。しかし、歯磨き粉に含まれるフッ素が口腔内に多く残っていると、乳酸菌がうまく定着しにくくなることがあります。そのため、歯磨きの後はすぐにではなく、30分ほど時間を空けてから乳酸菌を摂取するのがおすすめです。フッ素の効果を活かしつつ、乳酸菌が口の中に届きやすくなるでしょう。
毎日続けるためのコツ
毎日の習慣として定着させるには、決まった時間に行うことが大切です。朝の歯磨き後や就寝前など、ルーティンに組み込みましょう。
|
摂取方法 |
タイミングの例 |
1日の目安稜 |
ポイント |
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乳酸菌タブレット |
歯磨き後30分 |
1~2粒 |
噛まずに溶かす |
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ヨーグルト |
食後 |
100~150g |
甘味料に注意 |
|
発酵食品 |
食事と一緒 |
適量 |
塩分過多に注意 |
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乳酸菌飲料 |
間食時 |
1本 |
無糖タイプが良い |
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ペースト |
寝る前歯磨き後 |
1包 |
口の中で溶かす |
乳酸菌による口腔環境への影響は、数週間から数か月かけて現れる場合があるため、短期間で変化を判断せず、根気よく継続することを心がけましょう。
歯磨き後、寝る直前にペーストをお口に含ませて飲める!
乳酸菌が虫歯菌や歯周病を抑えるって本当?歯に関わる乳酸菌習慣について解説 のまとめ
乳酸菌は、口腔内の細菌バランスに影響を与える可能性があることから、虫歯や歯周病予防の補助的手段として注目されています。
ただし、乳酸菌ケアは主に予防的な役割を担っています。乳酸菌ケアを始める前には、歯科医院やクリニックなどで歯科医の診察を受け、虫歯や歯周病がある場合は先に治療を完了させることが大切です。
治療後の健康な口腔環境と、日常の歯磨きやフロスに合わせて、口腔内環境を整える生活習慣を心がけながら、乳酸菌ケアを取り入れてみましょう。小さな習慣があなたの口もとを健やかに保つ第一歩になるでしょう。
歯磨き後、寝る直前にペーストをお口に含ませて飲める!
